福岡高等裁判所 昭和32年(ネ)39号 判決 1957年11月22日
福岡市馬屋谷百五十九番地の一
控訴人
高根一四
右訴訟代理人弁護士
山本彦助
被控訴人
国
右代理者法務大臣
唐沢俊樹
右指定代理人
小林定人
同
林正治
右当事者間の昭和三十二年(ネ)第三十九号船舶所有権移転登記手続請求控訴事件につき当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴指定代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張及び証拠の提出、援用、認否は、控訴代理人において、乙第一号証を提出し、当審における証人高根信之の証言及び控訴本人訊問の結果を援用し、甲第五号証中、控訴人名下の印影の成立を認め、その余の成立を否認すると述べ、被控訴指定代理人において、甲第五号証を提出し、乙第一号証の成立を認めた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
理由
当裁判所は、原判決の示すところと同一の理由により、被控訴人の本訴予備的請求を理由があるものと認めるので、右理由の記載(但し原判決書第三枚目裏八行から九行に「……被告の認めるところであり……」とある部分を「……当審における控訴本人訊問の結果により、これを認め得るところであり……」と改める。)を引用する。
なお当審における証人高根信之の証言及び控訴本人訊問の結果の各一部を右認定の資料として追加すると共に、これに反する右証人及び本人の各供述部分は、いずれも措信し難く、他に該認定を左右するに足りる証拠は存しない。
以上認定の事実によれば、本件船舶は昭和二十八年中更に訴外協進商事海運株式会社から控訴人に対し、同会社の控訴人に対する借入金の弁済に代え譲渡されたものであるから、被控訴人が民法第四百二十三条に基き控訴人に対し現物出資による本件船舶の所有権移転登記手続を求める第一次の請求は、理由がないので排斥を免かれないけれども、国税徴収法第十五条に基き前記代物弁済契約の取消を求めると共に、控訴人に対し右訴外会社に対する本件船舶の現物出資による所有権移転登記手続を求める予備的請求は理由があるのでこれを認容すべきである。
よつて被控訴人の予備的請求を認容した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないので、民事訴訟法第三百八十四条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村平四郎 裁判官 天野清治 裁判官 泰亘)